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超回復の嘘と本当。筋トレとの相性は?超回復の正体はグリコーゲンの回復だった!

こんにちは。Natsumi( @natsumi_dct です。

私ごとですが、6月2日に行われた運動会のリレーに参加し、ハムストリングスの筋肉痛がものすごいことになりました。100m全力ダッシュの威力は半端ではありません。運動会から3日後に筋肉痛が無くなり、さっそく脚トレをしてみましたよ!

いわゆる超回復期間の筋トレです。

私の運動会の話から始まって恐縮ですが、前回の記事で、次回は筋肉痛について書きますと言いました。

アイシングの効果があるやり方を理学療法士が伝授。ケガを早期回復!

でも、その前に筋肉痛を語る上で大切な「超回復」について整理したいと思います。 

「超回復」について、ある程度のトレーニングをされている方は一度は耳にしたことがあったり、調べたりしたことがあるのではないでしょうか。

そして、「超回復」について調べれば調べるほど、超回復が嘘なのか本当なのか訳が分からなくなり、不安になっていないでしょうか。

(恥ずかしながら私もその中の一人でした超回復というネーミング自体怪しい雰囲気ですもんね笑。

今回は、「超回復」の嘘と本当を整理し、その正体を解き明かしたいと思います。

長くなるので先に結論を述べると、

「超回復」の考えは嘘の所もあれば、本当の所もあります。

そして「超回復」の正体は筋肉の中に含まれるグリコーゲンの回復です。

そもそも従来の「超回復理論」をおさらい。

強い負荷をかけることで傷つき衰えた筋肉細胞が休息によって回復し、さらに負荷を受ける前よりも筋力が強くなる現象。過負荷から24日間が超回復の期間といわれ、その期間に過負荷運動を行い、次の回復を待つということを繰り返すことで筋力を合理的に増強できると考えられている。

引用:コトバンク

超回復の理論を簡単に解説
  1. 強い負荷の筋トレで筋繊維が傷つく
  2. その後2~4日(4898時間)で筋肉が成長し、筋力が強くなる
  3. その間に再び強い負荷の筋トレをすることで徐々に筋力が増加する

といった筋トレと時間経過をもとに筋力増強を説明した理論です。

超回復の嘘はメカニズムが説明できていない所

私は現役理学療法士ですが、「超回復」について学校で習った記憶はありません。なんと、「超回復」は運動学の専門家の理学療法士ですら習わない用語なのです。

また、「超回復」は日本で生まれた言葉だと言われています。外国語に直訳するとsuper recoveryですが、これで英語文献は得られませんでした。存在するのはglycogen supercompensationというグリコーゲンの超回復についての論文でした。

日本で「超回復」をテーマに論文記載している物も非常に数少ないのでエビデンスには乏しいと言えます。

そんな中でも、「超回復」に触れたネット記事は散在しています。

つまり、「超回復」の嘘とは、メカニズムを適切に説明できていないことです。

英語論文で存在するグリコーゲンの回復こそが超回復のメカニズムを適切に説明してくれており、科学的に正しい「超回復」の考え方と言えます。

小川による補足

グリコーゲンの超回復について書かれている論文が「Brain glycogen supercompensation following exhaustive exercise」という論文でして、こんなグラフが掲載されています。

グリコーゲンの回復

トレーニングで減少したグリコーゲンが時間経過とともに元の水準よりも多くなる現象が、いつの間にか「超回復」と捉えられるようになりました。

超回復の正体は筋肉の中のグリコーゲンの回復だった!

グリコーゲンは、運動における重要な栄養素であり、糖質の一種です。自動車で例えるなら、筋肉がエンジンでグリコーゲンがガソリンといっても良いほど、筋肉(エンジン)のエネルギーとして大切なものです。

グリコーゲンという言葉が聞きなれなくてわかりにくい方は、炭水化物と理解してください。(食品の栄養成分表示には炭水化物と記入されていることがほどんどです。炭水化物は糖質と食物繊維からなっています。)

グリコーゲンは、筋肉と肝臓に貯蔵されていますが、筋肉には一時的にしか貯めておくことができません。十分に筋肉に貯めておくための食事方法をグリコーゲンローディング(カーボローディング)といいます。

運動をせずに、ただグリコーゲンを貯めると消費されずに蓄積していく一方です。炭水化物が太ると一般的に理解されているのはこのためです。グリコーゲンローディングもやはり体重は増えますが、トレーニングパフォーマンスは向上します。

何を目的にグリコーゲンを摂取するかで、摂取に対する考え方は異なりますが、ここでは超回復(筋力増強・筋肥大)のための摂取をお話させていただきます。

肝心の超回復とグリコーゲンの関係性ですが、筋トレによって筋肉内のグリコーゲンはエネルギーとして使用され、減少します。

減少したグリコーゲンが回復するのが2448時間後であり、その時間はもともと筋肉に貯蔵されていた量よりも多くのグリコーゲンを蓄えることができます。

つまり、筋トレから2448時間後にエネルギーがたくさんある状態となるため、筋肉も強くなったと捉えられるのです。

筋繊維が回復している・肥大しているというよりも、筋力を出すためのエネルギーが回復していることが超回復のメカニズムとしては正しいと言えます。

余談ですが、大手食品メーカーの「グリコ」はグリコーゲンが由来しているそうです!エネルギーがいっぱい詰まったお菓子を食べて健康的に生活してほしいという思いが伝わってきますね。

超回復の考え方自体は間違いでは無い

ではなぜ「超回復」が正しいと思われ、トレーニーの間で広まったのか。

それは、筋トレ→回復→筋力増強という考え方の流れは間違っていないからです。

筋トレをすれば筋肥大し筋肉が強くなります。ダンベルはあなたを裏切ったりしないのでご安心下さい(笑)。

特に筋トレを始めて間もない人ほど、「超回復」の効果が実感できてしまうのではないでしょうか。

これは、筋肥大によって筋肉が強くなったというよりも、どのようにしたら力を出せるか脳と筋肉が神経的に学習してくれた効果による所が大きいです。

筋力が一時的に上がっても、必ずしもそれが筋肉量の増加を表しているわけでは無いということです。例えば、トレーニングを始めて間もない人が、大会で予想以上の力を出したりすることがあるのは、神経系の興奮水準が高まった状態に当てはまります。

つまり、筋収縮は筋肉だけでなく大脳を含めた中枢神経系の関与も大切で、トレーニングしている筋部位をいかに意識し、集中して筋トレを行うかにも繋がります。

また、筋力増強のために、筋トレを始めたばかりの時から100㎏でベンチプレスを行う人は居ませんよね(例えが大げさですが笑)。筋トレを始めたばかりのころはまず軽い重さから行い、ある程度の余力を残して終えるが多いのではないでしょうか。そしてトレーニングを継続していくにつれ、重量が上がったり、追い込んだり、筋収縮のスピードを速めてみたりして行きます。

これは、運動学で「持続性、漸進性の原則」といい、筋トレ開始初期は筋収縮に参加する運動単位(1つの運動神経が支配する筋繊維の数)の増加によって絶対的な筋力が向上し、次いで筋の量が増える筋肥大が起こるのです。

筋肥大は2~3日で成果が語れるほど簡単なものではなく、筋力増加と筋肥大はイコールの関係でもありません。

小川による補足

気になるのは「筋肥大が超回復によるものでなければ、何のメカニズムが働いているのか?」ということですよね。山本義徳さんの「業績集8 筋肥大・筋力向上のプログラミング」では「ストレス応答」が答えとして挙げられています。

筋肉がストレス(筋トレによる負荷)に適応しようとして筋肥大をもたらすと解説されており、「オーバーワーク」や「101の刺激」の話にも繋がってきます。書籍のレビューは別記事にまとめていますので、合わせてチェックしてみてください!

マンデルブロ・トレーニング 【騙されたと思って読んで欲しい2冊】山本義徳さん提唱の「マンデルブロ・トレーニング」に出会ってメニューを一新しました。

「超回復」について言われていた嘘を整理

No Pain No Gainは嘘

筋繊維が微細損傷するまで筋トレをしなければ「超回復」が出ないのは嘘です。もっと言えば筋肉痛が出るまで筋トレをしなければならないのも間違いです。オーバートレーニング(過負荷)となりケガに繋がる恐れがあります。

これについては、上記の小川さんのお話を参考下さい。また、次回の筋肉痛の記事でも紹介していきます。

完全な休養が必要なのは嘘

ただ休んでいる間に勝手に筋肉が回復してくれる訳ではありません。回復にもエネルギーが必要です。エネルギーとなる栄養が必要であり、その栄養を身体に浸透させるためには血流も重要になります。疲労物質を排出する、身体の酸素・栄養素を効率よく血流によって身体にめぐらせるために軽い運動(ジョギング・ヨガ・ストレッチなど)は大切です。

これについては、腰痛や肩こりにも効果的な「疲れが取れない時こそ動いて回復!身体の仕組みとやるべき対策を解説」で紹介していますので、お時間があればご一読下さい。

疲れが取れない時こそ動いて回復!身体の仕組みとやるべき対策を解説

ゴールデンタイムだけタンパク質(プロテイン)を摂取すればいいのでは無い

筋トレ後のゴールデンタイム(トレ後30分以内が一般的)にプロテインを摂取するのはトレーニーの常識になっていると思いますが、タンパク質の合成はトレ後24時間継続するという研究報告があります。

24時間のトータル摂取量は年齢、体重、トレーニング内容で異なりますが、スクワットやベンチプレスなど多関節を動かすトレーニングの場合は体重×1.62g(1.03g~2.20gの平均値)の摂取が望ましいと言われています。

タンパク質の合成は24時間と考えると、筋肉=タンパク質では超回復理論に当てはまりません。

※著:庵野拓将 「科学的に正しい筋トレ 最強の教科書」より一部抜粋

筋肉・身体回復に大切なことは、食事・睡眠・運動の基本

トレーニーは筋肉を強くするため、大きくするために筋トレを行いますが、そもそも筋トレは筋肉を壊す作業であることを忘れないようにしなければなりません。

筋トレによって筋繊維は微細損傷します。そのわずかな損傷を回復させることこそが、筋肉を作る大切な作業です。筋トレ以外の生活の仕方(食事や睡眠)が最も回復を左右してくるところです。

素早い疲労回復のためには、運動後の栄養補給は絶対条件です。トレーニーは筋トレ後30分以内のゴールデンタイムにプロテインを摂取しますよね。そこにグリコーゲン(炭水化物)を加えることで体は回復モードへ一気に切り替わります。筋トレよって減少したグリコーゲンの回復には、タンパク質との組み合わせが最も効果的です。糖質はタンパク質の分解を抑制してくれるので、筋肥大を狙っている人もプロテインだけでは栄養素が不十分ということです。

マルトデキストリンの摂取タイミングについて

先日、小川さんとマルトデキストリン(糖質)をトレ中・トレ後のどちらに摂取した方が良いかという話になりました。

私たちの結果としては、エネルギーの補給という観点からはトレ中の摂取が必要で、筋肥大のための回復の観点からはトレ後の摂取が良い。つまり、どちらも摂取した方が良いが、減量中は特に摂取量に注意しなければならないということになりました(分食できるならトレ後におにぎりを食べた方が一番いいかも)。これに関してはトレーニーの皆さんはどうされていますか?ぜひ意見箱や小川さんLINEへご連絡下さい! 

そして睡眠は、脳・身体を休めるために重要な回復手段です。睡眠中には成長ホルモンが分泌されます。寝る子は育つ、ボディービルダーは昼寝も大切などと言われるのは、成長ホルモンによって骨・筋の成長・発達させるためです。

睡眠のゴールデンタイムは22時~2時なんという話を聞いたことがあるかもしれませんが、最近では時間よりも質に注目されています。入眠30分~1時間後(ノンレム睡眠の中でも最も深い眠りになる徐波睡眠)に成長ホルモンが最も多く分泌され、2時間後から一気に減少します。つまり、深い眠りであるノンレム睡眠をしっかり得ることが質の良い睡眠と言えます。

一般的な結論となってしまいましたが、高タンパク・高糖質の食事と質の良い睡眠を意識し、元気に筋トレするという基本が、理想の身体を作ることは常に意識しておきましょう!

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