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筋トレのフォームが合わない理由|教え方を、骨格に合わせるようになった話

この記事の要点

  • 正しく動くとは、骨盤・背骨・肩甲骨をコントロールして軸を取り、その軸で動くこと。ただ、軸の取り方は骨格によって違った
  • だから、軸の作り方を伝えるために骨格を見て、伝え方を変える。タイプは決めつけるためではなく、補助輪として使う
  • 上達は少しずつではなく、ある日突然やってくる。しっくりこないなら、センスのせいにせず、自分の感覚を信じていい

同じ説明をしているのに、すぐに伝わる人と、どうしても伝わらない人がいました。

「膝とつま先の向きをそろえて、まっすぐしゃがんでください」

ある人は、一回でできる。

別の人は、何度やってもしっくりこない。

最初は、伝わらないのは私の説明が下手だからだと思っていました。

半分は、その通りでした。

でも、もう半分は違いました。

伝わらなかった原因は、骨格の違いでした。

この記事では、うちのジムが教え方を骨格に合わせるようになった理由を書きます。

やり方の細かいところではなく、「なぜそうしたのか」の話です。

  • 教科書どおりのフォームが、どうもしっくりこない
  • 自分は運動のセンスがない、と思っている
  • 教える側で、伝わる人と伝わらない人がいて悩んでいる

そんな人に、読んでもらえたらうれしいです。

教科書は、万人にはハマらなかった

うちのジムでは、トレーニングのやり方を冊子にまとめて、カリキュラムとしてお伝えしています。

私は、トレーナー出身ではありません。

だから、自分の感覚に頼らず、誰が教えても同じように伝わる「教科書」を作ることを大事にしてきました。

教科書としては、いいものができたと思っていました。

でも、現場でお客様に伝えていくうちに、気づいたことがあります。

教科書のフォームが、ハマる人と、ハマらない人がいる。

ハマる人には、驚くほどすぐ伝わります。

ハマらない人には、どれだけ言葉を変えても伝わりません。

そして、ハマらない人ほど、こう言うんです。

「私、運動のセンスがないので」

それが、ずっと引っかかっていました。

そもそも「正しく動く」とは何か

そこで、一度立ち止まって考えました。

そもそも、人の体が「正しく動く」とは、どういうことなのか。

私なりの答えは、こうです。

正しく動くとは、体の軸をしっかり取って、その軸で動きを作ること。

フォームの細かい形は、その結果にすぎません。

では、軸はどうやって作るのか。

うちのジムでは、体の3つの場所に分けて考えています。

  • 骨盤:体の土台。ここが安定しないと、上に何を積んでもぐらつく
  • 背骨:土台の上に立つ柱。曲げる・伸ばす・ひねるを、自分で選べるようにする
  • 肩甲骨:上半身の動きの要。ここをコントロールできると、背中や胸の大きな筋肉をちゃんと使える

この3つを自分でコントロールして、軸を取る。

軸を保ったまま、しゃがむ、押す、引く。

うちで「体の使い方」として伝えているのは、突き詰めると、これだけです。

ところが、ここで一つ問題がありました。

軸の取り方が、骨格によって違ったんです。

私の説明は、私と似た骨格の人にだけ伝わっていた

いろいろ調べて、試して、たどり着いたのが骨格の話でした。

人の体は、骨格によって、軸を取りやすい体の使い方が違います。

ある人にとって自然な体の使い方が、別の人にとっては、とても軸を取りにくい。

それに気づいて、分かったんです。

私の説明は、私と似た骨格の人にだけ、伝わっていた。

自分の感覚で「こうするとやりやすいですよ」と伝える。

同じタイプの人には、それがそのまま正解になります。

でも、反対のタイプの人にとっては、軸を取りにくい動きを勧められていることになる。

伝わらなかったのは、相手のセンスの問題でも、努力の問題でもありませんでした。

ジムの中で、もう一つ見えてきたことがあります。

お客様と同じタイプのトレーナーが担当すると、続けてくれる方が多かったんです。

教え方の上手い下手だけではなく、「体の感覚が近いかどうか」が、伝わりやすさを左右していました。

ここで、考え方がはっきりしました。

目指す「正しい動き」は、誰でも同じです。

軸を取って、動く。

でも、その軸の取り方が、骨格によって違う。

だから、軸の作り方を伝えるために、骨格を見る。骨格によって、伝え方を変える。

骨格を見るのは、タイプ分けをしたいからではありません。

その人に届く言葉を選ぶためです。

真面目に教科書どおりやる人ほど、報われない

もう一つ、気づいたことがあります。

世の中の「正しいフォーム」の説明は、どうも特定の骨格の人に合わせて書かれていることが多いように感じます。

たとえば、スクワットの「膝とつま先の向きをそろえる」。

これが自然にできる人もいれば、そうすると力が入らず、膝がつらくなる人もいます。

うちのお客様にも、つま先を少し外に向けたほうが、ずっと楽に立ち上がれる方がいました。

だとしたら、教科書どおりにやってうまくいかない人がいるのは、当たり前です。

その人が悪いのではなく、教科書が、その人の骨格向けに書かれていなかっただけ。

真面目に教科書どおりやっている人ほど、報われない。

これは、私が一番作りたくない状態でした。

私は、筋トレに救われた人間です。

正しく努力すれば、ちゃんと報われる。そういう世界だったから、救われました。

だから、真面目な人ほど報われない形は、どうしても放っておけなかったんです。

実は、ずっと前に聞いていた

この考え方自体は、ずいぶん前から知っていました。

関東にいたころ、とあるセミナーで、骨格のタイプに合わせて教える方の話を聞いたことがあります。

新潟に移住する前ですから、6年くらい前です。

当時は、全然ピンときませんでした。

自分が教える側になって、反対のタイプのお客様に伝わらなくて困って、ようやく「あの話は、こういうことか」とつながりました。

もっと早く、ちゃんと勉強しておけばよかった。

これは正直に、もったいないことをしたと思っています。

もう一つ、きっかけがありました。

いろいろなトレーナーさんのパーソナルを受けに行っている方が、こう言っていたんです。

「教えてくれる人は、2種類いる。自分のやり方を教えてくれる人と、骨格に合わせてやり方を教えてくれる人」

骨格に合わせて教わってから、記録が一気に伸びた、と。

それを聞いて、腹が決まりました。

2025年の秋、教え方を作り直した

2025年の秋から、教え方を作り直しました。

最初にお客様の骨格を確認して、その人が軸を取りやすい伝え方をする。

しゃがみ方、重心を置く場所、意識するポイント。骨格によって変えています。

マニュアルも、資料も、教える順番も変えました。

トレーナーさんと何時間も話し合って、作り直しました。

作り直した教材「身体の取扱説明書」。骨格別の指導をまとめている
作り直した教材「身体の取扱説明書」。骨格別の指導をまとめている

教材の名前は「身体の取扱説明書」にしました。

教科書を渡すのではなく、その人の体の取扱説明書を、一緒に作っていく。

そんなつもりで、お伝えしています。

一番時間がかかったのは、自分と反対のタイプの人の「やりやすさ」を理解することでした。

自分の体では、その動きのやりやすさが分からないんです。

反対のタイプのお客様やトレーナーさんに何度も試してもらって、「こっちのほうがしっくりきます」という言葉を、一つずつ集めていきました。

担当のトレーナーを、お客様と同じタイプの人に変えることもあります。

同じタイプのトレーナーが「こんな感じです」と見せるほうが、言葉で説明するより早く伝わるからです。

トレーニング指導の様子
トレーニング指導の様子

お客様に、最初に伝えている3つのこと

今は、トレーニングを始めるお客様に、最初にこんな話をしています。

①ゴールは一つ。でも、道筋は人によって違う

やりたいことは、一つに決まっています。

軸を取って、正しく動くこと。

でも、そこにどうやってたどり着くかの道筋は、人によって違います。

骨格が違えば、同じゴールでも、通る道が違うんです。

②いろんな角度から言うので、受け取りやすいものだけ受け取ってください

指導の中では、同じことを、いろいろな言い方でお伝えします。

「背中を寄せて」と言ったり、「胸を張って」と言ったり。

言葉は違っても、基本的には、全部同じことを言っています。

だから、全部を覚えなくていい。

自分がしっくりくる言葉だけ、受け取ってくださいとお伝えしています。

③上達は、少しずつではなく、ある日突然やってくる

トレーニングは、少しずつ上手になっていくものだと思われがちです。

でも、たくさんの方を見てきて、実際は違うと感じています。

ある日突然、できるようになる。

同じことをお伝えし続けている中で、ある日「あ、こういうことか」と腑に落ちる瞬間が来る。

そこから、スクワットもデッドリフトも、全部が一気に伸びていく。

そんな場面を、何度も見てきました。

そこにたどり着くまでの時間は、人によって違います。

これまでどんなスポーツをしてきたか、どんなふうに体を動かしてきたかでも変わります。

だから私たちは、伝え方を工夫しながら、なるべく早くそこへ行けるようにサポートしています。

何が変わったか

一番変わったのは、伝わる精度です。

以前は、どこか「感覚を伝える」仕事になっていました。

感覚は、伝わる人には伝わるけれど、伝わらない人には伝わらない。

骨格に合わせて伝えるようになってから、反対のタイプのお客様から「すごくやりやすい」と言ってもらえることが増えました。

今は、無料のカウンセリングの中で骨格を確認して、しゃがみ方まで体験してもらっています。

うれしい変化もありました。

あるお客様は、自分の軸の取り方が分かってから、体を動かすことが楽しくなったそうです。

ジムのトレーニングだけでなく、テニスなど、ほかのスポーツも始めました。

そして、こう言っていました。

「どのスポーツも、軸の取り方は一緒なんですね」

「まさか自分が、こんなに体を動かすようになるとは思いませんでした」

正しく体を使うことが分かると、トレーニングの外まで、世界が広がっていく。

「センスがないので」と言っていた方が、自分に合った動き方を見つけたときの顔は、なんとも言えません。

タイプは、補助輪のようなもの

ここまで書いておいて、なんですが、正直に書いておきます。

骨格のタイプの考え方は、怪しく見えることもあると思います。

私も最初は、少しそう思っていました。

タイプが生まれつきなのか、あとから変わるものなのかも、説が分かれています。

タイプの境目も、動画などで見るほどはっきり分かれているわけではありません。すごく近いところにいる人も多いです。

それに、もっと大事なことがあります。

自分がどう体を使えば楽なのかは、その人の体が、もう自然に知っているんです。

これまでの生活やスポーツの中で、自然と身についているもの。

それを、タイプに当てはめて無理に変えるのは、順番が逆です。

タイプは、答えではなく補助輪。自分の感覚を、もっと信じてあげてほしい。

うちでは、タイプを「この人はこう動くべき」と決めつけるためには使いません。

本人が「しっくりくる」と感じる位置を、一緒に探す。

そのときの手がかりとして、補助輪のように使っています。

教科書どおりがしっくりこない人へ

最後に、トレーニングをしていて「どうもしっくりこない」と感じている人に、伝えたいことをまとめておきます。

  1. センスのせいにしない:しっくりこないのは、努力やセンスの問題ではなく、軸の取り方が人と違うだけかもしれない
  2. 自分の感覚を信じる:「こっちのほうが楽」という感覚は、体が自然に覚えてきたもの。たとえば椅子から立ち上がるとき、つま先の向きを少し変えて、楽に立てるほうを比べてみる
  3. 痛みが出る動きは、続けない:教科書どおりでも、膝や腰がつらいなら、それはあなたに合っていない
  4. 受け取りやすい言葉だけ、受け取る:同じことを言っている言葉は、たくさんある。しっくりくる一つが見つかればいい
  5. ある日突然、できる日が来る:今できなくても、ある日「こういうことか」と分かる瞬間が来る。そこまで続けることが大事
  6. 教わる相手を選ぶ:自分のやり方を教える人と、相手に合わせて教える人がいる。合わないと感じたら、相談してみていい

教え方に、完成はない

骨格に合わせて作り直して、もう一つ気づいたことがあります。

教え方に、完成はない。

2025年の秋に作り直したマニュアルも、もう何度も書き換えています。

お客様が変われば、伝え方も変わります。

私自身も、1年前よりは少し分かるようになりました。

時代が変われば、「正しい」とされることも変わっていきます。

だから今は、できあがったカリキュラムを渡すことに、そこまで大きな意味はないと思っています。

大事なのは、目の前のお客様や時代に合わせて、作り変えていけるかどうか。

これは、ジムの集客や組織づくりとも、まったく同じでした。

まだ勉強中です。

ただ、目の前のお客様が「あ、こういうことか」とつかむ瞬間までは、とことん付き合いたい。

それが、今の私たちの仕事だと思っています。

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