RESULT BLOGメニュー

地方で事業をつくる考え方|「毎月ゼロに戻る事業」と「積み上がる事業」を組み合わせる

この記事の要点

  • 事業を、人が動いて毎月のお金を生むENGINEと、仕組みや場所が働いて積み上がるASSETに分けて見る
  • ASSETの一番の役割は、収入より判断を守ること。地方は場所が安いので、ASSETを持ちやすい
  • 失敗例はプロテインパン。事業の核を特定の人に預けた形だった。能力ではなく設計の問題で、閉じるのは始めるよりはるかに心に来る

事業を始めるとき、いつも最初に考えることがあります。

これは、毎月ゼロに戻る事業か。それとも、積み上がる事業か。

この考え方は、インターネットの仕事をしていたころの怖さから生まれました。

今、新潟の小さな町で事業をしていて、一番役に立っている考え方です。

  • 地方で、お店や事業をやっている
  • インターネットの仕事で食べているけれど、ずっと不安がある
  • トレーナーとして、独立を考えている

そんな人に、読んでもらえたらうれしいです。

インターネットの仕事は、毎月ゼロに戻った

新潟に来る前、私はインターネットの仕事をしていました。

プロテインのレビューを書いて、セール情報を届けて、紹介料をいただく仕事です。

一番売れていたときは、本当によく売れました。

でも、ずっと怖かったんです。

理由は2つあります。

1つ目は、毎月ゼロに戻ること。

先月どれだけ売れても、今月はまたゼロからスタートです。

積み上がっているようで、何も積み上がっていない。

2つ目は、土台が全部、他人のものだったこと。

メーカーが「もうやめます」と言えば、それで終わり。

検索の仕組みが変われば、それでも終わり。

実際、検索の仕組みが変わったとき、ブログへのアクセスは大きく落ちました。

自分で作っているようで、実は何も自分の手の中にない。

しかも、始めるのにお金も資格もいらない仕事なので、同じことをする人はいくらでも出てきます。

毎年のように「時の人」が出てきて、いずれ消えていく。

そういう人を、たくさん見てきました。

事業を、2つに分けて見る

それで、事業を2つに分けて見るようになりました。

ENGINE(エンジン):人が動いて、毎月のお金を生む事業。

立ち上がりが早くて、お客様と直接向き合える。

ただし、人が止まれば止まる。毎月ゼロに戻る。

ASSET(アセット):仕組みや場所が働いて、積み上がっていく事業。

育つまでに時間がかかる。

ただし、人の手が離れても続く。去年作ったものが、今年も働いてくれる。

事業を「ENGINE」と「ASSET」に分けて、組み合わせる
事業を「ENGINE」と「ASSET」に分けて、組み合わせる

今のうちの会社でいうと、パーソナルジムがENGINE、不動産と女性専用の24時間ジムがASSETです。

どちらが良い、悪いではありません。

大事なのは、両方を持って、組み合わせることです。

ENGINEだけだと、働けなくなった時点で止まります。

ASSETだけだと、育つまでに時間がかかりすぎます。

ASSETは、判断を守るためにある

ASSETがあると、何がいいのか。

一番大きいのは、収入そのものより、判断が守られることだと思っています。

売上を立てなければいけない状況に追い込まれたとき、私は正しい判断ができる自信がありません。

目の前の売上を取りにいってしまう。たぶん、全然あり得ます。

でも、毎月安定して収入を生み出す土台があれば、ジムで無理な売り込みをしなくていい。

合わないお客様に、無理に通ってもらわなくていい。

お客様にとって良いことを、そのまま選べます。

このあたりは、不動産に全振りした3年間の記事で詳しく書きました。

→ 地方で不動産賃貸業を始めた理由|Webの人間が、全振りした3年間で得たもの

地方は、「場所」が安い

ここからが、地方ならではの話です。

大宮に住んでいたころ、「場所を使って事業をする」という発想自体がありませんでした。

家賃も土地も高くて、手が届かなかったからです。

調べてみると、東京都と新潟県では、平均の地価に25倍以上の差がありました。

場所を持つハードルが低い。

それはつまり、ASSETを持ちやすいということです。

古い家を直して貸す。

空いている建物で、お店をやる。

小さなテナントで、24時間ジムを始める。

都会だと大きなお金がかかることが、地方だと手の届く範囲で試せます。

人口が少ない。お客様が少ない。

地方には、不利なことがたくさんあります。

でも「場所が安い」は、地方の数少ない、はっきりした強みです。

地方には、場所がある
地方には、場所がある

ENGINEを、ASSETにつないでいく

もう一つ、意識していることがあります。

ENGINEで出会ったお客様や、作ったものを、ASSETにつないでいくことです。

パーソナルジムでは、お客様が目標を達成したら「卒業」があります。

卒業は嬉しいことですが、そこで関係が切れてしまうのが、ずっと引っかかっていました。

それに、トレーナー1人が1日に見られるお客様の数には、限りがあります。

どれだけ仕組みを整えても、その上限は外せません。

それで、2025年の春に作ったのが、女性専用の24時間ジムです。

パーソナルで、一人ひとりにしっかり向き合う。

卒業したあとは、24時間ジムで、自分のペースで続けてもらう。

ENGINEで生まれた関係が、ASSETとして積み上がっていく形です。

小さなテナントで始めた、女性専用の24時間ジム(2025年)
小さなテナントで始めた、女性専用の24時間ジム(2025年)

落とし穴:ASSETは、作った瞬間がピークになりやすい

最後に、この考え方の落とし穴も書いておきます。

仕組みが完成すると、つい安心してしまいます。

でも、世の中もお客様も、少しずつ変わっていきます。

作った形は、放っておくと、少しずつずれていきます。

実際、私も「仕組みを作り切った」と思ったところで、これではダメだと気づきました。

仕組みを作り変えられる人がいないと、ASSETも、結局は弱っていきます。

今は、そこに一番時間を使っています。

→ パーソナルジムの仕組み化|作り切った瞬間に「これじゃダメだ」と思った話

それから、ASSETの多くは借入を伴います。

借りる以上、決算書が読めること、銀行と話せることは避けられません。

ここは、私も一から勉強しました。

失敗例:プロテインパンの事業を閉じた

ここで、私の失敗を一つ書いておきます。

2023年から、プロテインパンの販売をしていました。

減量中でも、おいしいパンが食べたい。

でも、売っているものは脂質が多かったり、味がイマイチだったり。

だから、作りました。

ブログもジムもそうですが、自分の生活の延長から始めた事業です。

新聞にも載せてもらいましたし、私自身も毎日食べていました。

今でも、良い商品だったと思っています。

でも、2026年の10月で、閉じることにしました。

理由は、事業の一番大事なところを、特定の人がいないと成り立たない形にしてしまっていたことです。

パンを作っていたのは、パン職人さんでした。

その方が「辞めます」と言ったら、続けられない。

実際に、その日は来ました。

そのあと、手伝ってくださる方とも出会えて、続ける道もありました。

でも、よく考えると、構造はまったく同じです。

担い手が変わっただけで、「その人がいなくなったら止まる」形は、何も変わっていない。

実際、その方にも、離れる日が来ました。

またいつか、同じ状況になる。

そう思って、閉じる決断をしました。

閉じるのは、始めるより、はるかに心に来ます。

定期購入してくださっていたお客様に、こちらの都合でお休みを伝える。

製造のために整えた場所や、関わってくださった方への後始末もある。

始めるときは、自分の頭の中だけで決められます。

でも、閉じるときには、巻き込んだ人が必ずいます。

だから今は、事業は簡単に始めないほうがいいと思っています。

振り返ると、これは土台をプラットフォームに預けていたインターネットの仕事と、同じ形でした。

預けていた先が、プラットフォームから「人」に変わっただけです。

これは、能力の話ではなく、設計の話でした。

パンを作る腕がなかったから、うまくいかなかったのではありません。

事業の核を、誰か一人に預ける形で組み立ててしまった。

全体像をつかまないまま組み立てると、せっかく時間をかけたのに、無駄になってしまうことも大いにあります。

製造を引き継ぐために、自分たちでも焼いてみた(2026年4月)
製造を引き継ぐために、自分たちでも焼いてみた(2026年4月)
それでも、「その人がいなくなったら止まる」形は変わらなかった
それでも、「その人がいなくなったら止まる」形は変わらなかった

事業を始める前に、問うこと

最後に、事業を始めるとき、私が最初に問うことをまとめておきます。

  1. これは、毎月ゼロに戻る事業か、積み上がる事業か:どちらかだけに偏っていないか
  2. 土台は、自分の手の中にあるか:プラットフォームや特定の誰かが「やめます」と言ったら、終わってしまわないか
  3. 事業の核を、一人に預けていないか:その人がいなくなっても続く形になっているか。担い手を替えるだけでは、形は変わらない
  4. うまくいかなかったとき、負けない形になっているか:最悪のケースでも、会社が止まらないか
  5. やめる条件を、先に決めているか:閉じるのは、始めるよりはるかに大変。始める前に、終わり方まで考えておく
  6. ENGINEで生まれたものを、積み上げる先があるか:出会ったお客様や作ったものが、流れて消えていないか
  7. 地方の「場所が安い」を、使えているか:都会と同じ戦い方をしていないか

この問いを先に考えるようになってから、追い込まれて判断を誤ることは、だいぶ減りました。

あわせて読みたい