地方で不動産賃貸業を始めた理由|Webの人間が、全振りした3年間で得たもの

この記事の要点
- インターネットの仕事はPLだけで考えられた。借りる側になって、決算書を作り、「BSを育てる」とはどういうことかが分かった
- 借金にも良い借金と悪い借金がある。決算後は事業計画書を作って、銀行に自分から説明しに行っている
- 攻撃力より守備力。出ていくお金を小さくすれば、稼がなくていい状態が作れる。だから人に優しくなれるし、待てる
新潟に来て最初の3年間、私は不動産賃貸業に全振りしていました。
床を張って、壁を張って、決算書を作って、銀行と話す。
毎日ホコリまみれで、とにかく忙しかったです。
この記事では、インターネットの仕事をしていた私が、なぜ不動産賃貸業を始めて、何を得たのかを書きます。
先に結論を書いておくと、得たのは収入よりも、会社の数字の見方と、判断の仕方でした。
- インターネットの仕事で、毎月の売上に追われている
- 不動産に興味はあるけれど、借金が怖い
- 自分の会社の数字を、ちゃんと読めている自信がない
そんな人に、読んでもらえたらうれしいです。
「暮らしていけるくらいでいい」から始まった
移住を決めたとき、新潟で何をやるかは決まっていませんでした。
「場所を使った何か」という、ぼんやりしたイメージだけです。
ただ、一つだけはっきりしていたことがあります。
インターネットの仕事だけに頼るのは、もう怖い。
インターネットの仕事は、毎月ゼロに戻ります。
先月どれだけ売れても、今月はまたゼロからです。
私は心が強くないので、追い込まれたら、目の前の売上を取りにいってしまう可能性が全然ある。
だから、安定した土台が欲しいと思っていました。
最初に考えたのは、すごく単純な計算です。
毎月家賃が入る家が何軒かあれば、とりあえず生きてはいける。
最初は、本当にそのくらいの気持ちでした。
家賃は、あちらから振り込まれてくる
最初のきっかけは、地元の不動産屋さんから紹介していただいた企画でした。
「1万円で物件をプレゼントします」という企画で、その第1回の当選者になったんです。
直して貸したら、毎月の家賃が入ってくるようになりました。
インターネットの仕事で、毎月同じ額の売上を立て続けるのは、本当に大変でした。
でも家賃は、あちらから振り込まれてきます。
「大家さんって、逆なんだな」と思いました。
家を借りるとき、大家さんが誰かなんて、ほとんど気にしません。
家賃は、払って当たり前のもの。
その当たり前の流れの中に、商品を置いておける。
今月の家賃は、来月も入ってくる。
直した部屋は、直したまま残る。
「毎月ゼロに戻る」怖さの反対側に、やっと来られた。
「レバレッジをかけてなんぼ」
最初は、現金で古い戸建てを買っていこうと考えていました。
そんなとき、同い年の不動産屋さんと出会いました。
いろいろ話す中で、こう言われました。
「お金は借りたほうがいいよ。不動産はレバレッジをかけてなんぼ」
それまで、借金はなるべくしないほうがいいものだと思っていました。
でも話を聞いて、借りてみようと決めました。
借りるなら、個人より法人のほうがいい。
それで2020年11月に、チカラコブ株式会社を作りました。
YouTubeを見ながら、一つずつ覚えた
ここから、買った家を自分で直す日々が始まります。
床を張る。壁を張る。設備を付ける。
やり方は、YouTubeを見ながら一つずつ覚えました。
初めてアパートを買ったときは、持ち主が変わったお知らせを出したとたんに、2部屋から退去の連絡が来ました。
いきなり半分が空室です。
そのうち1部屋はタバコで内装がボロボロで、これも経験だと思って、自分で直しました。
新潟ならではの洗礼もありました。
雪で屋根が落ちる。電線が切れる。カーポートが壊れる。
冬が来るたびに、何かが起きます。
私は、美的センスがありません。
だから、センスで直すのはやめました。
自分で決めた仕様で、毎回同じように直す。
そうすると、どんどん早くなっていきました。
今思えば、これがのちの「ジムの仕組み化」の原点だったのかもしれません。
この時期は、本当に家にいる時間がありませんでした。
当時のブログに、「家庭内のバランスシートが毀損している」と書いたくらいです。
妻には、ずいぶん負担をかけました。
決算書を「作る」側になった
法人でお金を借りるようになって、一番大きく変わったのは、決算書との向き合い方でした。
インターネットの仕事をしていると、基本的にお金を借りることがありません。
借りないので、誰かに見せるための決算書を作る、という発想がなかったんです。
もちろん、売上からかかったお金を引いて、いくら残ったか。
この「損益計算書(PL)」の考え方は、ずっとありました。
でも、借りる側になると、銀行が見ているのはそれだけではありません。
バランスシート(BS)です。
ざっくり言うと、こういう違いです。
- 損益計算書(PL):1年間で、いくら稼いだかの成績表
- バランスシート(BS):今、会社が何を持っていて、いくら借りているかの一覧
インターネットの仕事は、PLだけで考えられる仕事でした。
今月いくら売れて、いくら残ったか。
でも、毎月ゼロに戻るので、BSには何も積み上がっていきません。
「BSを育てる」とはどういうことか。それが分かったのが、一番大きかったです。
借金にも、良い借金と悪い借金がある
不動産賃貸業でいうと、BSを育てるのはこういう流れです。
お金を借りて、家賃が入る物件を買う。
入ってくる家賃で、借りたお金を少しずつ返していく。
返すほど、借金は減っていく。
でも、物件は残る。
そうすると、会社が持っているものと借りているものの差、つまり会社の体力が、少しずつ厚くなっていきます。
借金にも、良い借金と悪い借金があります。
使ったら何も残らないものに借りるのは、悪い借金。
会社に残って、働いて、自分で返してくれるものに借りるのが、良い借金です。
BSを育てて、会社を強くしていくための借金は、あの時代においては、一つのやり方として「あり」だと思えました。
それまで「借金はなるべくしないほうがいい」と思っていた私にとって、これは大きな考え方の転換でした。
銀行には、自分から説明しに行く
借りる以上、数字は自分で分かっていないといけません。
だから、勉強しました。
今は、会社の仕訳も自分でやっています。
必ず守っているルールは、一つだけです。
毎月10日までに、前の月の数字を締める。
そのうえで、毎月、バランスシートと損益計算書を見る。
年の初めに計画を立てて、毎月の数字を見ながら直していく。
これを続けていたら、決算のときの数字が、だいたい予想のプラスマイナス5%くらいに収まるようになりました。
そして、決算が終わったら、事業計画書を作ります。
それを持って、お付き合いのある銀行それぞれに、決算の報告に行きます。
今年の数字はこうでした。
来年は、こういうことをやっていきます。
その説明を、こちらからしに行くんです。
銀行の担当の方からは、「ここまでやってくれる会社は、本当に少ないです。ぜひ続けてください」と言っていただいています。
おかげで、銀行とはすごく話が通じている感覚があります。
正直、借りたいと相談したときに断られることは、今はほとんどありません。
数字を自分で説明できると、銀行は「敵」ではなく、一緒に考えてくれる相手になります。
攻撃力より、守備力
BSを見るようになって、もう一つ、考え方が変わりました。
攻撃力を上げるより、守備力を上げる。
いくら稼ぐかより先に、毎月いくら出ていくかを、シビアに見極める。
出ていくお金が少なければ、そもそも、たくさん稼がなくていい状態が作れます。
たとえば、今のパーソナルジム。
一つの場所を複数の事業者でシェアしていて、家賃は水道光熱費込みで、かなり小さく抑えています。
お客様が1人来てくれれば、家賃が払える程度です。
派手さはありません。
でも、出ていくお金が少ないから、目先の売上に追われずにいられます。
追われていないから、人に優しくなれる。
ジムで無理な売り込みをしなくていい。
合わないお客様に、無理に通ってもらわなくていい。
そして、「待つ」という選択が取れるようになります。
お客様が自分で決めるのを、待てる。
人が育つのを、待てる。
時期が来るのを、待てる。
待てることは、小さな事業者の強みです。
大きな会社は、たくさんの人とお金を動かし続けないといけません。
止まることも、待つことも、なかなかできない。
でも、小さな事業者は、出ていくお金さえ小さくしておけば、待てるんです。
動かさなきゃいけない状態ではない。
それは、大手にはできないことだと思っています。
だからこそ、その「待てる状態」を、ちゃんと作るべきだと思っています。
土台があるから、誠実でいられる
不動産賃貸業を始めて一番変わったのは、収入ではなく、判断の仕方でした。
売上を立てなければいけない状況に追い込まれたとき、正しい判断ができるほど、私は自分を信じていません。
家賃という土台があって、出ていくお金が小さいから、目先の売上より、お客様にとっていいことを選べる。
土台があるから、誠実でいられる。
今振り返ると、不動産賃貸業に全振りした3年間は、収入を作った期間というより、「自分が正しい判断をできる状態」を作った期間だったのだと思います。
順番としては、不動産賃貸業が先で、ジムが後
不動産賃貸業をやっていると、使える場所に出会います。
実は、パーソナルジムも、不動産賃貸業をやっていて出会った場所から始まっています。
ただ、この時期は不動産賃貸業に夢中で、ジムは人に任せっぱなしでした。
それがうまくいかなかった話は、第4章で書いています。
→ パーソナルジムの仕組み化|作り切った瞬間に「これじゃダメだ」と思った話
のんびりするのは、私にはまだ早い
全振りした結果として、今思っていることもあります。
不動産賃貸業は、いいものです。
でも、のんびり、何もしなくていい時間を過ごすのは、私にはまだ早い。
大家業をしていると、お金と時間の両方を持っている方に、たくさん出会います。
そういう方と話していると、自分だったらどうするだろう、と考えるようになりました。
何をするにも、賞味期限のようなものがあると思っています。
トレーニングに、一心不乱に取り組んでいた時期がありました。
プロテインの価格を追いかけて、レビューに全力を注いでいた時期もありました。
物件を買うことに必死だった時期もあります。
どれも今は、あのころほどの熱量はありません。
時代は変わるし、自分も変わっていきます。
だから、「いつでもできる」ことなんて、ないと思っています。
今、私はパーソナルジムを真剣に作り込んでいて、このやり方を伝えたいと思っています。
でも、10年後、20年後も同じ熱量でそれができるかは、分かりません。
今しかできないことがある。
だから、不動産賃貸業で伸ばすのは、今じゃない。
今は、そう思っています。
毎月ゼロに戻る仕事をしている人へ
最後に、当時の私のように、毎月ゼロに戻る仕事をしている人に、伝えたいことをまとめておきます。
- 攻撃力より、守備力を上げる:いくら稼ぐかより先に、毎月出ていくお金をシビアに見る。出ていくお金が小さければ、稼がなくていい状態が作れる
- PLだけでなく、BSを見る:今月いくら残ったかだけでなく、会社が何を持っていて、いくら借りているか。BSが育つと、会社は強くなる
- 借金は、良い借金と悪い借金に分けて考える:会社に残って、働いて、自分で返してくれるものに借りるのは、怖がるだけのものではない
- 数字は、自分で締めて、自分で説明する:毎月決まった日までに締める。決算のあとは、銀行に自分から説明しに行く。それだけで、銀行との関係は変わる
- 「待てる状態」を作る:待てることは、小さな事業者の強み。人に優しくなれるのも、待てるからこそ
- 今しかできないことを、後回しにしない:熱量には賞味期限がある。「いつでもできる」は、たいてい来ない
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このブログを運営している人
小川健太|チカラコブ株式会社 代表取締役:今は新潟県見附市で、パーソナルジム「CLASSIC GYM」と女性専用24時間ジム「ココカラジム」を運営しています。
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